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昨年のある日、東京に出張した際、浜松町の本屋で噂に名高い「効率が10倍アップする新・知的生産術」を購入。"自分をグーグル化する方法"というサブタイトルと帯に印刷されている勝間氏の写真から、ターミネーター3のT-Xお姉さんを連想してしまったのは、私だけでしょうか?
待ち合わせ時間を利用して読み始めたのですが、出だしの1ページ目からゴシック体で強調された箇所があまりに多いことに辟易。おまけに、ゴシック体のweightが重い事この上なし。明朝体との大きなコントラストで目が疲れ、丁寧に読み込もうという気持ちは一気に失せてしまいました。
このような極太ゴシック体と明朝体混在のスタイルは最近の新書(特に自己啓発書の類)によく見受けられますが、私には読者を舐めきった編集方針としか思えません。文脈上の軽重を判断するのは、あくまでも私達読者です。最初から、著者や編集者らに「ここ読めワンワン」とばかり、フォント変更や傍点の嵐で強調されては、興ざめもよいところでしょう。
「ここ読めスタイル」が前提としているのは、明らかに斜め読み。
時間をかけずに、1分でも早く読み終えて次の本を買ってね。
かくの如き出版社の声が聞こえてきそうです。
勝間氏がこのようなスタイルを取っている理由は、第三章 読書投資法7で語られます。
情報は、一定量を集めると質に転換します。本については著者と直接話をするわけではないため、その転換において、自分メディアや他者メディアよりも転換率が悪くなります。だからこそ、大量の情報を頭に入れることで、質への転換を加速させるのです。
したがって、1つの本を読む時間は、1人の人と出会う時間+α、短ければ1〜2時間、長くとも4〜5時間で十分だと思っています。その中で学べるものを学びとっていくわけです。
なるほど、情報量の確保が最優先される訳です。
情報は一定量を集めると質に転換する
私は、この一行を本書のキーセンテンスと捉えました。勝間氏だけでなく、最近流行りの自己啓発書のどれもが多読/速読を勧める理由が垣間見えたような気がします。
本書の第二章 技術6「本代をケチらず良書を読む」では、著者の読書方法が開陳されているのですが、書籍の価格帯に基づいた良書の出現頻度が分析されています。
私が読んでいて、面白い知見があったと思う本の頻度は、やはり3または4のほうが高いのです。たとえば3のカテゴリですと、概ね数冊に1冊は目から鱗が落ちるような内容が含まれています。--途中略--
つまり逆算すると、結局本の値段とその価値には相関関係があり、どんな価格帯の本を買ったとしても、結局いい本には概ね1万円の書籍代に対して1冊巡り会えるかどうか、ということになるのです。
私には、ソフトカバー・ハードカバー・専門書の違いがよく分からないのですが、ビジネス書の世界ではこのような分類が一般常識とされているのでしょうか?いずれにせよ「1万円ぽっきりで1冊の良書と巡り会える」というのは、私からすると信じられないような僥倖です。
本書の最大の問題点は、読者対象を明示していない点にあるかと思います。この本で語られる知的生産術は、勝間氏と同じような経歴を目指す読者には有効なのでしょう。しかし、少なくとも私には当てはまらない。
次回は、勝間氏と私の立ち位置の違いを述べることにしましょう。