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   西田 亙の本:GNU 開発ツール -- hello.c から a.out が誕生するまで --

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2009-01-02 (Fri)

[Thoughts] 名著は読み手の心に火をつける

明けましておめでとうございます

更新が止まること、早9ヵ月。久しぶりの復活です。

The great teacher inspires.

William Arthur Ward というアメリカの教育者(1921-1994)が残した、教師に関する有名な格言があります。

  • The mediocre teacher tells.
  • The good teacher explains.
  • The superior teacher demonstrates.
  • The great teacher inspires.

私が敬愛する故川上正光博士(電子回路の著者)は、この言葉を「先生の四階級」に改変し、自著「日本に先生らしい先生はいるのか」(閣文社 1990年・絶版)の最終章で次のように記しています。

日本に先生らしい先生はいるのか

先生の四階級

  • 平凡な先生は、ただしゃべる(Bad teacher)
  • よい先生は、自分でよく咀嚼して教える(Poor teacher)
  • すぐれた先生は、考えさせる(Good teacher)
  • 偉大な先生は、心に火をつける(Excellent teacher)

自分がこれまで出会ってきた数々の師はどのタイプであったのか、翻って自分自身はどうなのか。読み直す度に深く考えさせられるのですが、この言葉はそのまま専門書の書き手にも当てはまるように思います。

著者の四階級

  • 平凡な著者は、ただ書き写す(Bad writer)
  • 良い著者は、自分の頭で咀嚼し自らの言葉で書き記す(Poor writer)
  • 優れた著者は、読者に考えさせる(Good writer)
  • 偉大な著者は、読み手の心に火をつける(Excellent writer)

読者の心に火をつけるためには、著者自身の心に火が灯っていなければなりません。このためには、偉大なる名著から種火を分けてもらう必要があるのですが、その種火は人里離れた洞窟の奥深くで風前の灯火となっている・・。

話題書に物申す

私の経験では、本屋で平積みになっているような書籍が心に火を灯してくれたことはありませんでした。ここ最近も、インターネット上で話題に上った書籍にいくつか目を通してみましたが、読後には虚しさが残るばかり。あまりの虚しさで"怒り"に火がつく始末。

 自分って不感症?それとも性格異常者?

本気でそう心配していた時期もあるのですが、数少ない絶版書や古典の中に自分をすくい上げてくれる書物があることを考えると、少なくとも同好の士はいるらしい。ということで、最近の話題書に物申しつつ、昨年私を燃え上がらせてくれた書籍の中から2冊をご紹介することにしましょう(「プログラマの教養はmanual pagesに宿る」最終回は、その後の予定)。