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   西田 亙の本:GNU 開発ツール -- hello.c から a.out が誕生するまで --

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2008-02-21 (Thu)

[Radio] 鉱石ラジオ・ショップリンク集

鉱石ラジオは比較的簡単に自作できますが、地方在住の場合は基本パーツを揃えるだけでも大変ですし、鉱石やリッツ線など、日本では入手しづらい部品もあります。そこで、これから「鉱石ラジオ道」を歩もうとする方々のために、彷徨の間に見つけたお勧めのショップをまとめておきます。

まずは、日本編からスタート。

銀河通信社

トップバッターは日本が世界に誇る鉱石ラジオ研究家、小林健二氏による「銀河通信社」。クリックするだけで、思わず涙腺がゆるみます・・。私自身はまだ注文していないのですが、レトロ感覚をお好みの方は、このキットしかないでしょう。それにしても、社名が泣かせますね。

ミズホ通信

ラジオキットと言えば、ミズホ通信の AM ラジオキット RX-123D を外す訳にはいかないでしょう。私もその昔購入しましたが、スパイダーコイルを自分の手で巻き、ゲルマニウムラジオの基本骨格を楽しむことができます。このキットの特徴は、ゲルマラジオだけでなく、トランジスタ版とIC版、計三種類の回路を組み立て可能な点にあります。「一粒で三度おいしい」キットです。

一方、鉱石ラジオを楽しむためには、アンテナが重要なポイントになりますが、ループアンテナでは同社の UZ-8DXs が有名です。少々値は張りますが、感度は抜群で室内での受信も容易となります(本機にはFET アンプが付いてきますが、これでは無粋なので、私はアンテナ出力を直接ゲルマニウムラジオや鉱石ラジオに接続して楽しんでいます)。

UZ-8DXs は、しばらく生産中止となっていましたが、ファンからの要望に応え、数年前から受注生産が受付けられています。私が注文した時は、生産中止の時期だったのですが、「丁度手元に1セット余裕があるから」と、運良く販売していただけました。この時、電話の応対に出られた男性の優しさと品のある声がとても印象的で、今でもはっきり覚えています。恐らく、社長の高田さんだったのではないでしょうか。

高田継男氏は日本ハム界の重鎮であり、会社経営だけでなく数多くの記事や無線工学書を執筆されています。ひとつひとつ丁寧に梱包されたキットや、手書きの説明書を眺めていると、氏の無線に対する愛情と、若い世代への思いが伝わってきます。

その思いは、社名にも現れています。

日本の国は、古くから瑞穂の国(みずみずしいイネの穂の美しい国)と呼ばれ、水がきれいで、秋には稲がみのり、自然の美しい国でした。近年になり世の中が便利になった反面、落ち着きを失い、さわがしい時代になり、自然が失われつつあります。そんなときにあって、ゆっくり無線を楽しんでいただこうと、ミズホ通信を社名に致しました。

現在流行りのIT業界では、到底考えられない世界観です。

エレ工房さくらい

こちらは、いわゆる電子工作キットの会社であり(ラジオキットも販売中)、私もまだ注文経験はないのですが、「お直し券」サービスにホロリと来たので、応援の気持ちを込めてご紹介します。

ラジオキットや電子工作キットを「小口で」販売されている会社は、こちらが申し訳ないほど安い値段が設定されている上に、対応が懇切丁寧という特徴があります。中でもエレ工房さくらいは、抵抗一本からの注文も受付けられている上に、うまく組み立てられなかった購入者のために無料のお直し券がキットに添付されているのです。

この世知辛い世の中、信じられないようなサービスですが、その心は「ごあいさつ」に記されています。

電子工作というと、昔はメジャーな(でもないか?)趣味でしたが、今は興味をもったとしても、周囲にやっている人はあまり見かけなくなってしまいました。キットを組み立ててみたいけれど、失敗したらイヤだし、何が悪くて失敗したのかわからないままになってしまうのでは?と不安に思う方も多いのではないかと思います。そのために、当店では、キットに”お直し券”を同封し、たとえ組み立てに失敗しても、当店にて修理のうえお客様の元にお返しいたします。

恐らくは、完成させることができず途方に暮れている小学生や中高生を念頭に置いたサービスだと思われますが、その姿勢には頭が下がります。

ところが、困ったことに、このような良心的なサービスに対して、土足で踏みにじる良からぬ大人がチラホラ存在するようです。この様子は、「おーまい、がぁ〜!!」で面白おかしく語られていますが、読みながら私も思わず「おーまい、がぁ〜!!」。お直し券利用の場合も、非常識な大人が少なくないようで、読んでいて悲しいやら情けないやら。

子供を教える前に、大人の再教育が必要なのかもしれません。

ハムズオフィス

熊本市にある HAM 専門店ですが、珍しく中古のハイインピーダンス・ヘッドフォンを取り扱っています。在庫一覧はこちら

輸入品とのことですが、アメリカだけでなく、ドイツ・イギリス・ロシアなどヘッドセットの生産国が多様である点が特徴です。eBay では滅多にお目にかかれない製品も多く、私もこれまでに数本購入しています。もちろん、すべて動作品ですから心配ありませんし、質問への対応も大変丁寧です。

次に、海外編です。

Scott's Crystal Radios

トップは先日紹介した、Scott さんのサイト。氏自慢のコレクションからの放出品が、時折 Vintage headphones for sale に並びます。説明文はさすがに詳細であり、商品は全て動作確認済みです。コードが傷んでいる際の張り替えサービスは、世界広しと言えども本ショップだけでしょう。対応は紳士的で丁寧です。

Borden Radio Company

Lance Borden 氏もまた、鉱石ラジオ野郎の間で知らぬ者はいないほどの有名人です。中でも、同氏のオリジナルキットは人気があり、専門誌でも紹介されています。

これらのキットは、構造が明快で、見た目も美しく、感度も良好と、三拍子揃っています。私もいくつか組み立てました。中でも "THE CORNELL WORLD WAR II FOXHOLE RADIO" は、第二次世界大戦中、兵士が鉛筆の芯と髭剃りの刃を使って作ったと言われる鉱石(髭剃り?)ラジオを現代に再現したもので、一見の価値有り。子供が喜びそうですね。

Borden Radio Company では、この他にもイヤフォン・ヘッドセット・鉱石・鉱石検出器・ゲルマニウムダイオード・キャパシタ・真空管などを扱っており、豊富な品揃えは眺めていて飽きません。

Borden 氏もまた、紳士的で気の良いおじさんです。届いた荷物を開封すると、注文した商品以外に、カレンダーやボールペン、果てはオリジナル・レーザーポインターなど、「おまけ」がたくさん梱包されており、久しぶりに小学生気分を楽しむことができました。

1N34A.COM

鉱石ラジオ熱が進行すると、自分の手で高性能な Diamond weave coil などを自作したくなってきます(手作りコイルについては、「ぼくらの鉱石ラジオ」に詳しい)。ただし、AM 放送の周波数 1MHz にも達すると、表皮効果により高周波電流は導線の表面ばかりを流れるようになり、抵抗成分が急激に頭をもたげるため、高級コイルでは細い導線を撚り合わせたリッツ線(Litz wire)が常用されます。

もちろん、通常の単線とは異なり製造に手間暇がかかるため、値段は跳ね上がりますし、そもそも一般には入手が困難です。私が探した中では、1N34A.COM での取扱商品が最も種類豊富であり、小売りにも対応してくれていました(その分、割高になりますが)。撚り線の本数は41ゲージあたり5本に始まり、最大のものは46ゲージで660本にも達します。ここまで来ると、私の肉眼ではもはや一本一本が識別できません。

KERRIGAN-LEWIS WIRE

660本クラスのリッツ線は、日本では入手不可能だと思いますが、製造元はアメリカ・シカゴにある KERRIGAN-LEWIS WIRE です。アマチュアに対して好意的に対応してくれることで、大変評判の高い会社ですが、残念なことにホームページはもとより、メールアドレスすらありません。連絡先は、下記の通り。

 KERRIGAN-LEWIS WIRE
 4421 W. Rice Street
 Chicago, IL 60651-3487
 TEL 773-772-7208, FAX 773-772-3083

基本的には受注生産となり、販売は長さではなく重量(pound)単位。660/46 タイプで、1ポンドあたり110ドル前後(注文量に応じて大きくスライド)、納期は約6週間でした(送料が70ドル以上かかるので注意)。Money Order または Check で支払い完了後に、生産に入ります。

一度買っておけば、一生コイル人生を満喫できること、請け合いであります。

最後に

いつも思うのですが、ラジオ野郎の世界は、実に心が広くて大らか。しかも、若い人達に対して、おじさん達がとてつもなく献身的で真摯という特徴があります。ともすれば、ネットの喧噪に蝕まれそうになる自分をほっと一息つかせてくれる、ゲルマニウムラジオと心優しきラジオおじさん達に感謝します。