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   西田 亙の本:GNU 開発ツール -- hello.c から a.out が誕生するまで --

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2003-11-23 (Sun)

[Hard] 混迷するビデオタイミング

GCC プログラミング工房の VGA 解説記事を書くために、VGA ディスプレイのビデオタイミングについて調べる。VGA に関する記事は国内外を含めかなりの数が存在するけれど、いつものことながら、あるレベルを超えると参考になる資料がほとんど見当たらない。

VGA timing information」には不完全ながらも、いくつかの VGA タイミングに関するパラメーターが記述されている。しかし、この著者が文中で "The only standard is that there is no standard!" と語っている通り、ビデオディスプレイに関してはスタンダードがあるようで、存在しない。どれも微妙に違うのである。なぜか?

実は、CRT ディスプレイにはビデオ信号をスクリーン上に描画する期間(電子ビームON)と、ブランク期間(電子ビームOFF)のふたつが存在する。描画期間に関しては、どれも一定なのだけれど、ブランク期間の取り扱いが各種ビデオカードや CRT ディスプレイによって、微妙に違う。このために、「スタンダードがブレている」のが実情である。

なんとか、このスタンダードを一本化しようという組織が、Video Electronics Standards Association (VESA) 。しかし、VESA が 1980 年代後半から提唱してきたスタンダードは、旧来の CRT ディスプレイに基づいているため、最近のフラットパネルディスプレイや、HDTV モニターにはそぐわないものになってしまった。特に、電子ビームの水平帰線と垂直帰線に支配される長大なブランク期間は、新しいディスプレイ装置にとっては不要なものであり、本来の高性能を発揮できていない。

そこで、次世代のディスプレイ装置を念頭に置いた新たなスタンダードが模索されている。Dell が提唱している Coordinated Video Timing (CVT) はそのひとつ。このあたりの経緯は、Dell が公開している "Proposed Display Timing Standard Addresses Demands of Digital Flat-Panel Displays" に詳しい。

とは言うものの、やはり表示装置の基本は CRT ディスプレイである。この基本を知らずして、新しいディスプレイ装置は語れない。で、VESA の Monitor Interface Standards から、Discrete Monitor Timings (DMT) と Generalized Timing Formula (GTF) のふたつを注文。私は Non-member だから、それぞれ倍額の 300 USD もする。激涙・・。しかし、この文書を読まねば正確な記事は書けないのよね。かくして、ライター貧乏は続く。

情報機器と情報社会のしくみ

さて、CRT ディスプレイ上で電子ビームが画像を表示する様子は、「情報機器と情報社会のしくみ」中の「CRT ディスプレイのしくみ」が良く出来ている。ほれぼれする程の出来だけれど、残念なことに肝心のブランク期間が割愛されている。これじゃ、片手落ち、いや両手落ちだよねぇ。惜しい、本当に惜しいなぁ。

ところで、このサイトは渡辺編集長に教えて頂いたのだけれど、文部科学省のサポートの元(特定領域研究か?)、聖心女子大学の永野和男教授が主査として携わられたプロジェクトとのこと。質の高い動画に溢れているので、一見の価値あり。これだけの質の動画は海外にも見当たらない。文部科学省も、なかなかやりますなぁ。