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諸々の仕事が一段落したので、下調べを進めておく。まずは、近い将来必要になる Flash ROM programming だ。6809 にしろ、GBA カートリッジ ROM にしろ、Flash memory は必須のデバイスのひとつである。
昔と違い、現在では外部12Vは必要なく、単一電源のみで Flash programming が可能になっているため、書き込み回路の製作はそれほど難しいものではない。アドレスバスとデータバス、そして何本かの制御信号を接続するだけで、ライターが出来上がってしまう。後は、ソフトウェア次第。
とりあえず、どの会社の Flash ROM を採用するか、目処をつける必要がある。このために、出前迅速の RS コンポーネンツで検索。調べてみると、富士通の 512KB が 800円(ただし、DIP タイプなし)、AMD の 128KB が 670円、Atmel の 128KB が 1550円。DIP 型式と値段から勘案すると、AMD に軍配が上がるが、問題は値段ではない。私達にとって重要なことは、「最も良質なドキュメントを用意している会社はどこか?」である。いくら値段が安かろうとも、情報不足で使えなければ全く意味はないからだ。
以前にも書いた通り、Atmel 社 は私が知る限り世界最高の Document maker である。なぜ、世界一なのか?これから、余り知られていないその実力を紹介しよう。
まずは Flash Memory のセクションを選択する。すると、画面左端に Devices/Documentation/FAQs などのサブメニューが現れる。この画面インターフェースは Atmel 社の全製品に対して適用されている。よって、ユーザーはデータシートが欲しければ、目的の製品分野を絞り込み、Documentation をクリックするだけで良い。
ここからが、ATMEL の凄いところである。Documentation をクリックすると、さらに Data sheets/Appication Notes/Other Documents という細項目が現れる。後で説明するように、日本企業の場合は Data sheets までが関の山であるが、海外の一流企業(文書能力は会社規模と正比例する訳ではないが)は豊富な Application Notes を提供していることが特徴である。
通常、Data sheets には必要最低限のことしか書かれていない。よって、初めてそのデバイスを手がける技術者が何度熟読したところで、その全貌を理解することは極めて難しい。このため、Application Notes には、Data sheets への補足説明が用意されている。それは、具体的なプログラミング方法であったり、現場での応用例が回路図と共に紹介されていたりする。最近では、各社懸賞金付きでユーザーから優れた Application note を公募することも多い。日本とはえらい違いである。
それでは、まず最初に Flash memory - Application Notes を見て欲しい。ある製品を初めて扱う際に、まず最初に参照すべきものはその Overview である。CPU にしろ、Flash memory にしろ、同シリーズと言えども、市場に出回っている製品はかなりの種類にのぼる。よって、まずその全体像を捉えることが大切なのだ。
この点、Atmel 社は、自社製品の Overview にかけては、世界一である。技術者は Atmel AT29 Flash Memories を読むことで、AT29 シリーズの全貌を容易に掴むことができる。後は、Data sheets のページに用意されている、個別の製品の Data sheet を読めば良い。このように、「概論と各論」が厳密に区別されている点が、Atmel documentation の特徴である。おかげで、ユーザーは最小限の労力で Atmel 製品の全貌を理解することが可能になっている。
ソフトウェア野郎にとって、気になるプログラミング方法も、Programming Atmel's AT29 Flash Family という、そのものズバリの Application note 中に詳細に記述されている。
言われてみれば当たり前のことではあるが、以上のことを実践している会社は、世界的に見ても数えるほどしか存在しない。他社はどうなっているのか?実際に検証してみよう。
AMD を見てみる。まずは、Flash Memory のトップページ。一見して分かる通り、Atmel とは随分趣がことなる。見慣れないキーワードが氾濫し、ユーザーは一体どこから探索を始めれば良いのか、途方に暮れることだろう。
5.0V Devices を選択したところで、やっと右側に Am29F family の Overview が現れた。しかし、PDF は用意されておらず、何とも中途半端な内容。これでは、情報として全然足りない。
不満に思いながら、各製品のページに移るが、愛想のない Data sheet があるのみで、Application note は用意されていない。これでは、いくら値段が安くとも私には到底使いこなせない。却下である。AMD はまぎれもなく超一流企業ではあるが、ことドキュメントに関しては、二流以下であることが分かる。
最後に富士通。FUJITSU Japan のフラッシュメモリー一覧はこちらのページ。この中の、5V単一電源・512KB タイプのドキュメントリストはこちら。なんと、ドキュメントはデータシートしかない。Overview すら用意されていない。最悪である。
自社製品を手にした技術者が何を思うか?どういう情報を欲しいと思うのか?AMD、富士通の両社は、ユーザーの視点に立つことが出来ていない。彼らは、プレゼンテーションの基本から学び直す必要があるだろうし、ユーザーはもっと声高に粗悪なドキュメントに対して文句を付けるべきである。このためには、大学や専門学校、企業において、「良質なドキュメントとは何か」を正しく教え説くことが必要だろう。
さて、ソフトウェア界におけるドキュメントの実情はどうだろうか?ひとつ言えることは、*BSD, Linux, GNU は AMD, 富士通にあたるようだ。それでは、ソフトウェア界の Atmel はどこなのか?それは、私が思うに SUN である。これについては、また後日。