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   西田 亙の本:GNU 開発ツール -- hello.c から a.out が誕生するまで --

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2003-11-14 (Fri)

[Books] つくるCRTディスプレイ・6809マイコン製作実習

本日、待望の古本がユモトコーポレーションから届く。「つくるCRTディスプレイ」が1冊と「6809マイコン製作実習(上下)」が2冊だ。前者は昭和53年初版・昭和58年第6版という年代物で、全体に黄ばんでいる。後者は昭和62年の初版本であり、保管状態が良かったのか、ほとんど新品の状態。

実は私が欲しかったのは、先日紹介した「改訂 マイコン・システム設計ノウハウ 制御用8/16ビット系CPUと周辺回路の完全マスタ」だったのだが、本書をネット上で検索している間に、この会社の存在を知った。

同社は専門書関連の古書を取り扱っており、ネット上で分野別に整理された在庫一覧をチェックできる。中でも、コンピューターのページに列挙されたタイトルを一目見るなり、私は思わず画面にかぶりついた。まるで宝石の数々が並んでいるようだ。昔は素敵な本が数多く出版されていたことを知る。早速、気になる書籍をひとつひとつチェック。

リストが出来上がったところで、その価格を確認。「うん、これゼロがひとつ多いんちゃうか?」目をこすってもう一度見直す。やはり、1万円単位、老眼が出現した訳ではなさそうだ。

しばし考えこむ。かなりの高額だが、日本では仕方がないのだろうか・・。一晩悩み、翌日リストを3冊まで絞り込んだ。放物線型の日本経済を恨むことしきり。

考えてみれば、日本には海外では常識の「ハードカバー」がない。出版された時点で、10年、20年の風雪を堪え忍ぶことは想定されていないという訳か。日本から、世界に通用するリファレンス書が登場しない背景には、このような事情も存在するのだろう。

さて、届いた本だが、「つくるCRTディスプレイ」は驚くべき内容であった。私はてっきり CRT コントローラーを使ったディスプレイ回路の設計だろうと思っていたのだが、なんとゲートを組み合わせて全てを自作してしまうのである。このため、巻頭には2色刷原寸パターン図が、添付されている。かなり大規模な回路で、気の短い私には到底組み上げることはできまい。

最終章には「1チップCRTコントローラーの実験」と題して、お目当ての HD46505 を使ったディスプレイ回路の設計例が紹介されている。しかし、こちらもかなり複雑。同期信号とビデオ信号を制御し、キャラクタジェネレーターを通じて文字を表示するということは、膨大な論理量を伴う仕事であることが分かる。

幸い、現在は 1600 円で RAM/Flash ROM 付きの16ビットマイコンが手に入るので、ソフトウェアで VGA モニターを制御した方が、得策のようだ。贅沢な使い方ではあるが、H8/3664 を VGA 制御および PS/2 キーボード制御専用で使うことにしよう。

「6809マイコン製作実習」は、これまた優れた名著。現在でも、十分講義に使える内容だが、なぜ絶版になってしまったのだろうか?教育現場で8ビットマイコンを使うなら、Z80 ではなく 6809 だろう。

H8 シリーズは確かにお手軽な教材ではあるが、ブラックボックスもまた多い。この点、裸の 6809 と SRAM の組み合わせは、マイコンの本質を肌身で感じることができる。たとえ LED ピカピカや LCD 表示ぐらいしかできなくとも、「体得の境地」は 6809 でなければ得られないのではなかろうか。

以上3冊でしめて4万円弱。6809マイコン製作実習2冊だけでも、それだけの価値はあったと思う。おりしも、石川さんから HD6809E を送って頂いたことではあるし、20年前にタイムスリップすることにしよう。私にとっての「真の」マイコン歴は、ここからがスタートだ。