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   西田 亙の本:GNU 開発ツール -- hello.c から a.out が誕生するまで --

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2003-10-22 (Wed)

[Hard] Replica1 に刺激される:その二

Matsuyama City Standard

Replica1 は、私の心の奥底に隠されていた何かを解放してくれたようだ。8ビット時代の懐かしく甘い思い出が、凄まじい勢いでフラッシュバックする・・。

思えば、私のプログラミング人生の中であの頃が一番熱かったのかもしれない。実際、現在書いている連載ネタのほとんど全ては、浪人中の2年間に独学で培った知識がバックボーンになっている。

Replica1 は、私を育ててくれた8ビット環境が失われてしまったことの意味を、再考させる機会を与えてくれた。昔のオタクは高価なパソコンを購入できず、自慢のカセットテープ・ライブラリー持参でショップに日参したものだ。当時の支出は、月刊誌とカセットテープ代、この2つぐらいであるから、数千円にも満たない。けれど、マイコンオタクの心はお金では決して買えないもので、満たされていたはずだ。当時のショップに集う連中の目は、今思い出しても本当に生き生きとしていた。

これに対して現代のオタクは、自前のマシンはおろか、潤沢なパーツを買い揃えることができる。マザーボードやカードは、日々更新されるため、パーツ道に終わりはない。パーツ道とは消費の道である。創造の道ではないし、理解の道でもない。よって、いくらパーツを組み合わせたところで、彼らの欲望が満たされることはなく、フラストレーションと疎外感を解消するために、新しい買い物に走る訳だ。

こうしてみると、「彼らの救世主は8ビットマイコン、これしかないのではなかろうか?」と、ここ数日本気で考えるようになった。一個人が把握できるシステムとして、ちょうど良いサイズが8ビットなのだ。16ビットは少々大きい、32ビットなんてとんでもない。先日、Replica1 のメモリーマップを見た時に、この事を痛感した。

となると問題になるのは、8ビットマイコンである。Replica1 は少々高い。教育市場を考えれば、値段は1万円が限界だ。これはひとつ、真剣に考えてみよう。

がその前に、「カセットインターフェースをもう一度使ってみたいよね?」と再び悪魔の声がする・・。

で、ちょいと気合いを入れて検索した。が、思いの外ヒットせず。ひょっとすると、今でも PCI バス型式のカセットインターフェースカードが見つかるかと期待しのだが、なかった・・。Google を通じて、カセットインターフェースは、世界中で忘れさられつつあることが分かる。「そんなこと、おじさんは許さんよ!」と、息巻く。

辛抱強く検索を続けると、世界は広い、同志を何人か発見することができた。最初に紹介するのは、WikiPedia というサイト中の「Kansas City standard」という、そのものズバリのページ。カセットインターフェースを使ったことがない人も、その昔お世話になった人も、是非「この音色」を聞いてみてほしい。私は、泣きましたです、ハイ。と同時に、現代にこの技術を蘇らせるのじゃと、覚悟を決めました(日々この調子である)。

で、このページでも紹介されている「AC-30 Casstte Interface」だが、これはさすがに大袈裟過ぎ・・でも、貴重な一品である。

ということで、放浪の旅をしばし続ける。ソフトウェアインターフェース的な部分については、「THE ATARI CASSETTE」のページが優れている。ATARI 410 Program Recorder の技術仕様が詳細に書かれており、参考になる。ソフトウェア面は、この資料ひとつで間に合うだろう。

ところで、私は CASSETTE BOOT の項で、目が点になった。そうだよなぁ、男は黙ってカセットテープで起動だよ。リードエラーなしで、自分が書いたコードが起動した瞬間なんて、エクスタシーそのものだよなぁ・・。激しく妄想する。

しかし、まだ足りないものがある。ハードウェアだ。ソフトウェアだけの世界なんて、クリープを入れないコーヒーみたいなもんだ(古い)。最近、つくづくそう思う。で、丹念に検索を続けていくと、遂に目的の資料を発見した。「Commodore Cassette Interface」は、Linus Torvalds 氏も愛用していたコモドール・パソコンに採用されていたカセットインターフェースの仕様を、ハードウェアレベルから解説した、極めて貴重な文献である(一部画像が欠けているが、zip 型式の完全版 HTML ソース一式はこちら)。これは先日紹介した Elektor 誌に、1985年掲載された内容を公開したもののようである。なんてシンプルなのだろうか。これなら、私でも十分工作できそうだ。2003年、Matsuyama City Standard が誕生するのか?