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   西田 亙の本:GNU 開発ツール -- hello.c から a.out が誕生するまで --

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2003-10-23 (Thu)

[Thoughts] 評価されるべきもの

CQ 出版コピーサービス

昨日の検索で、おおよその見当はついたものの、私には当時のカセットインターフェースで使われていた FSK (Frequency Shift Keying)を裏付けするハードウェア的知識がない。しかし、さすがに20年以上昔の技術に詳細に触れた資料はネット上に転がっていなかった。

しかし、大丈夫。我が日本には「CQ出版のコピーサービス」という、世界に誇れるサービスがある。早速、トランジスタ技術のバックナンバーを探してみると、あるわあるわ・・。

  • カンサス・シティ・スタンダードについて (1977年7月)
  • 高速カセット・インターフェースの実験 2400〜9600ボーのデータ記録に挑戦 (1978年10月)
  • サッポロシティ・スタンダードのすべて (1980年11月)
  • 高速カセット・インターフェースを解析する (1982年2月)

思わず、ウハウハである。早速、トランジスタ技術コピーサービス宛に、現金書留を送る。1ページ100円というのは少々痛いが、これで目的の情報が手に入るのであれば安いものだろう・・と言いたいところだが、送料込みで6900円でありました(そりゃ、ページ数が多いんだよ)。せめて半額になればねぇ・・。ともかく、コピーが届く日が待ち遠しい!一日千秋の思いとは、このことだ。

コンピュータの名著・古典 100冊

表題の本が最近出版された。聞けば、「コンピュータ名著読書委員会が、コンピュータ出版史に残る歴史的名著を選出」したのだそうである。この本の出版があと一年先だったとして、「CPUの創りかた」は選出されただろうか?その目次を見る限り、おそらく否だろう。

選者はこうも言っている、「スピード時代は終わりを告げ、エンジニアの世界でも本質への回帰が叫ばれています」。その通りだと思うが、この100選の中に本質を貫いた本は、一体何冊あるのだろうか?私が見た限り、SICP ぐらいしか思い浮かばない。選出された作品群の中で、私が読んだことがある本のほとんどは、枝葉末節にこだわり、幹を忘れてしまったものばかりである。

もうひとつ大切なことがある。100選のほとんどは、海外で出版された本の翻訳である。日本オリジナルの本も、若干含まれてはいるが、この中に英語で翻訳され、世界的リファレンスとして支持されているものはあるのだろうか?

なぜ、世界に通用する教科書が日本から誕生しないのか?私達は、真剣にその意味を考える必要があるように思う。世界レベルに達していない教育環境が、生徒に「世界に通用する」ことを求めても、それは無理というものだ。

このような現状を考えると、CQ出版というのは偉大である。インターフェースやトランジスタ技術の目次を見ると、日本語タイトルに加えて、英文のタイトルが付け加えられている。つまり、これらの雑誌は世界的な注目を集めていることになる。肝心の本文が英訳されていないとは言え、世界を視野に入れた技術系月刊誌が他にあるだろうか?しかも、先ほど紹介したように、CQ出版は創刊時からの文献コピーサービスを提供している。

私に言わせれば、インターフェース・トランジスタ技術こそ、100選にふさわしい存在である。この2冊以上に、日本の技術社会へ貢献した本を私は知らない。