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   西田 亙の本:GNU 開発ツール -- hello.c から a.out が誕生するまで --

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2003-10-09 (Thu)

[Time] 相対性理論とGPS

本日、注文していた「パリティの 2003 年6月号」が届く。目的は、この号に掲載された翻訳記事「相対論とGPS」にある。

原著は、「Physics today 2002' May」に掲載されたコロラド大学教授 Neil Ashby 氏の記事だ。

秒速4kmで高度2万kmをぶっ飛ぶ Navstar 衛星における時間の進み方と、地上におけるそれはことなる。その誤差が測位距離に与える影響は、11kmにも及ぶというのだから、凄まじい。アインシュタイン博士は、この誤差に潜む謎を数式で解き明かした訳だが、この恩恵により現在のGPSがもたらされている・・というのが、その趣旨だ。

残念なことに、数式アレルギーの私にはそのすべてを理解することはかなわぬが、時刻同期という一見単純なテーマの底に、物理学の基礎理論が活躍する素晴らしさは、十分理解できる。ちっぽけな人間が、数式を駆使することで、自然がもたらすブレの中から、極限の精度をもつ真の時間を見つけ出そうとする姿は、感動すら与えてくれる。

GPS誕生の過程を詳細なドキュメントにすれば、これは最高に面白い読み物になるに違いない。ただし、この場合著者には数学と物理学の本質を素人にも分かるレベルで説明できる能力が求められる。誰か、「萌える数学」、「萌える物理学」、「萌える相対論」を書いてくれないだろうか?

それにしてもアメリカはやはり偉大だ。Ashby 氏のようなGPS界の重鎮が、物理好きの一般読者のために、身近なGPSと相対論を結びつけるレビューを執筆するというのが、凄い。このセンス、日本では考えられないことだ。久々に、一流研究者の姿を垣間見たような気がする。入門者の視点に立てる研究者というのは、極めて稀である。