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突然ですが、現在自費出版の準備を進めています。私がかねてより手懸けたかったテーマは、「ハードウェアとソフトウェアの接点」なのですが、市場の雑誌や書籍はいずれかの側に大きく傾いているために、これまで受け皿がありませんでした。
また、このページでも再三ご紹介している通り、過去の優れた書籍はことごとく絶版という憂き目に合っています。著者と言えども、原稿がひとたび出版社にわたってしまえば、自分の意志で再版を決めることはできないのです。
レイアウトや書籍の装丁についても、ほとんどの場合は出版社におまかせであり、自分のイメージ通りの本を納得いくまで、作り込める訳ではありません。
もちろん、自費出版には大きなリスクが伴う訳ですが、妻からの強力なサポートを得て、自分の夢を書籍という形で実現してみることにしました。
こんなことを言うと、本当に鬼に笑われてしまいそうなのですが、正直に告白しますと、自費出版を決意する前から頭の中では "Computer Architecture Series" というシリーズ名が決まっていました。
通常、アーキテクチャという言葉はハードウェアに対して使われますが、私はソフトウェアもまた、様々なデータ構造とアルゴリズムに基づいた構造物だと考えています。ですから、「ハードウェアとソフトウェアの接点」という思いを込めながら、Architecture という言葉を選びました。
ハードウェアとソフトウェアを語るとは、大風呂敷もよいところ、神をも恐れぬ不届き者と揶揄されるかもしれませんが、私は本気です。Computer Architecture Series は、以前このメモ上でもご紹介した、Building blocks 方式でストーリーを紡ぎ上げていきます。
第1巻のテーマとして何を選択するか、長い間迷い続けたのですが、まずは「道具の習得」から始めようということで、"GNU開発ツール" を取り上げることにしました。
既に雑誌連載や特集などを通じて、GNU開発ツールに関しては多くのページを寄稿してきましたが、今回の原稿は約2年のブランクの間に一から練り直した、全く新しいものです。具体的な内容については、近々このページ上でもご紹介できると思います。
この貴重な体験を進行形式でご紹介しておきたいと思います。既に、いくつかの失敗も経験していますが、出版において最も大切なことは、信頼できる印刷会社さんとの出会いではないかと思います。
今回は、妻の会社のパンフレットや広告デザインでお世話になっている、明星企画さんにレイアウトから印刷・製本までをお願いしました。本作りは家造りにも似ており、紙の選定、装丁の種類、レイアウトの決定など、こまごまとした打ち合わせが必要です。また、校正作業に入ると、途方もない量の修正箇所が発生します。このような手間暇かかる問題に、嫌な顔一つ見せることもなく、根気強く、かつ丁寧に付き合って頂けるスタッフに出会うことが、何よりも大切であると思います。
紙の選定ひとつをとっても、それこそ星の数ほどの種類がありますので、この中から自分たちの感性に合ったひとつの紙を拾い上げるためには、かなりの労力を必要とします。
今回の書籍デザインにあたっては、妻の会社のデザイナーである清家さんにお世話になっていますが、紙の質に関しては「黒いインクと紙とのコントラスト」を配慮して、「白い紙」を目指すことになりました。
"紙が白いのは当たり前じゃん" という方もおられるかもしれませんが、注意深く観察すると、ほとんどの紙には黄色や赤み・青みが入っています。純白に近い印刷用紙というのは、実は極めて少数派なのです。
「紙を求めて三千里」ではありませんが、私達のイメージを紙の専門卸業者さんに伝えながら、打ち合わせが続きます。私達の理想に一番近い紙が見つかったものの、在庫がありません。仕方なく、2番目の候補で作業を進めていたところ、卸業者さんから電話あり。「日本中の在庫を調べたところ、ある倉庫でご希望の紙を見つけました!」
これで、ようやく紙が決定しました。
紙の質と共に大きなファクターが厚さです。薄すぎると安っぽい感じになってしまいますし、ラインマーカーが裏に染み出てしまいます。厚すぎるとページをめくる際にそそり立ってしまい、具合が良くありません。薄すぎず、厚すぎずの紙厚を求め、ゲージで測り手触りを確かめながら、最適の厚さを絞り込んでいきます。
色々大変なことも多いのですが、様々な業種の方達と進める本作りは、とても楽しく、充実感があります。
出版作業は既に校正の最終段階に入っており、印刷も間近です。予約受付開始もカウントダウンに入っていますが、産声を上げる寸前の Oversea Publishing をご紹介いたします。読者の方に心から喜んで頂ける書籍を目指して、スタッフ共々鋭意作業中ですので、ご期待ください。